目次
発達障害の子供・大人とは?
まず、発達障害とはどのような障害を指すのでしょうか。
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達において得意と不得意の差がとても大きく、物事に対する感じ方に特徴があるために、周囲とうまくやり取りできず社会生活に支障を伴う障害のことです。
日本では平成16年制定の発達障害者支援法によって、次のように定義が定められています。
発達障害は自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥んた同生涯その他これらに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの
このように、発達障害には様々な病名が含まれており、軽度・重度といった程度の違いも全く異なります。
特徴は診断される発達障害にもよりますが、個人の特性も含まれており、中には複数の障害の特性を持ち合わせていることも多く、たとえ自閉症と判断されてもそれ以外の障害を伴うこともあります。
また程度の違いも様々なので、子どものころは個性的で済んでいたり、自分で対処できていたことが、大人になって求められるスキルが上がったことで対処できず、発達障害が分かる場合もあります。
年齢が上がり、周囲とうまく関われなかった結果、自尊心を傷つけられ自信を失い、二次障害としてうつ病や不安障害、アルコール依存症などを併発することもあります。
うつ病に効果はある?サプリメント3選!原因や改善するための生活習慣も解説します!広汎性発達障害について知りたい
広汎性発達障害は、自閉症や高機能自閉症、アスペルガ-障害など「社会性やコミュニケーションに関する能力の発達が遅れるという特徴をもつ発達障害」の「総称」です。
広汎性発達障害には「対人関係が苦手」「身振り手振りの意図を理解することが難しく、スムーズな対話が難しい」「感覚が鋭敏で過剰反応を示すこともある」といった特徴があります。
たとえば会話では一問一答ならすぐ答えられても「あれを取ってここに置いて」といった、推測や社会的ルール・常識に基づく返答が難しいとされます。
融通や気持ちの切り替えに必要な「想像してみる」という能力が特定のものに偏っていることが多く、基本的に「いつもと同じ」であることがとても大切です。
また特定の音や感覚に敏感な一方で、怪我をしていることに自分で気が付かなかったり、腐った食べ物であっても気が付かず食べてしまうといった、感覚の鈍さも持ち合わせています。
学習面では文字が覚えにくいという子がいる一方で、覚えることや学ぶことに特別問題がないケースもあり「少し変わった子」で親や先生も誤解したまま過ごしてしまうこともあります。
しかしそのまま成長したとしても、理解がない社会や職場に入った時に、コミュニケーションがうまくいかない、仕事が覚えられない、といった理由から生活が困難になるリスクが高いのです。
原因は中枢神経における何らかの障害、機能不全であると推測されているものの、詳しいことはまだ分かっていません。
確かなのは、育て方や生まれる前の行動、家庭環境、学習環境によって発生する訳ではないということです。
その子にとって得意なこと、社会の中で他の人と付き合っていくにはどうすればよいか、といった対応力を少しずつ身につけることが大切です。
発達障害に対する根本的な治療方法は見つかっていない
ただ前提として、2019年現在も発達障害を根本的に治療する方法はまだありません。
そして現在行われている治療も、治療を受けることで単に症状を抑えることが目的ではありません。
治療を通して、周囲との折り合いをつける方法を見つけ、その子、あるいはその人なりに学習や仕事に取り組みやすい環境を手に入れ、自身の行動を自分でコントロールできるようになるためのものです。
そうした治療を通した目的の達成のために、現在は大きく分けて2つの治療が行われています。
心理社会的アプローチおよび教育的支援
発達障害がもととなり、社会生活や学校生活、日常生活を送る上で困難と感じていることに対して支援を行い、困難を軽減する方法を自分自身、また子どもなら特に両親や周囲も学ぶ治療です。
認識に特徴があったり、言語に困難を覚える場合、コミュニケーションをとることに困難さを感じたり、大人だとその結果自信を無くして不安障害などを抱えているケースもよくあります。
そのため、コミュニケーションスキルを高めるためのトレーニングを行ったり、自分が得意な分野での成功体験を増やしたり、苦手な分野を克服する方法を見つけていきます。
社会や学校生活に適応する能力を増やし、生きにくさを少しでも改善することが目的です。
薬物療法
薬を使った治療、と聞くと、なんとなく怖く感じてしまうかもしれません。
発達障害の場合、薬は対処療法として使用されます。つまり、何か特徴的な症状が出ていて、それを抑えたりやわらげたりすることを目的としているのです。
したがって根本から治療するものではなく、たとえば反応しすぎてしまう状態を改善したり、睡眠障害への対処であったり、脳内物質を調整して症状をコントロールするなどを目的としています。
高い効果を挙げているものとして、ADHD(注意欠如多動症)への投薬治療が挙げられます。
中枢神経を刺激し、神経伝達物質の調整をすることで不注意や多動性、衝動性を緩和する目的で使われるコンサータなどが代表例です。
しかし、薬物療法は誰しもに有効ではなく、副作用の危険性もあり、またいつ使用をやめるか、あるいはどのタイミングで使用を始めるかの見極めも難しい治療方法です。
また発達障害によっては、薬物療法が効果を発揮できない場合もあります。不得意な分野に心理社会的アプローチの方が有効、あるいは現代ではまだ改善できない症状を持っている場合などです。
発達障害の診断は専門医がいる病院で
このように、個人に合わせた治療方法が行われるため「発達障害かも」と感じた場合は、まずは専門機関や専門的な知識を持つ専門医に相談することをおすすめします。
相談先としては、子どもなら保健センターや子育て支援センターなどがあり、大人なら発達障害者支援センターや、障害者就業・生活支援センターなど就業に関わる機関も挙げられます。
診断は医療機関で行われ、子供なら専門医がいる小児科や児童精神科、小児神経科などが対象となります。大人の場合は専門医がいる神経内科や精神科などが対象です。
発達障害は判断が難しいこともあり、複数の症状が組み合わさって現れることも多いので、直接専門医に見てもらい、診断を受けることが最も確実です。
また発達障害だけが現在の悩み・困りごとの原因とは限らず、診断の過程で他の病気が分かることもあります。
正しく状況を把握することは、子どもでも大人でも、今後はどのような支援を受けると学習・仕事がしやすくなるのか、何を周囲に働きかける必要があるのか、今後の方針が決まりやすくなります。
診断の場合は、認知や知能といった心理検査や面談による観察、生理学的検査など幅広い検査が行われます。
鬱病など、二次障害を伴う場合、さらに様々な検査を行うこともあります。
発達障害とADHD・アスペルガー症候群・鬱との関連が知りたい
ADHDとアスペルガー症候群は、発達障害の概念の1つです。
この2つの障害は、特定のものへの興味が強く、それに対することなら非常に積極的に行うほか、いつもと同じことであれば落ち着いてこなせるという特徴があります。
ADHDは「不注意」と「多動・衝動性」を併せ持っており、その結果、鬱病になりやすいとされます。
たとえば自分で堪えようと思っても突然立ち上がってしまったり、懸命に覚えても必要な持ち物を忘れてしまったりするので「自分はこんなに頑張ってもダメなんだ」と自己否定が強くなりがちです。
すると気持ちの落ち込みが強くなり、さらに不安感を自分で解決しづらい状況にもかかわらず、そのまま見過ごされて成長してから鬱病を発症する人がいます。
アスペルガー症候群は自閉症の1つのタイプであり、勉強面での遅れや知能の発達に問題がないことが多く、成長とともに人と接することに対する不器用な側面がよく分かるようになるのが特徴です
こだわりや表情の乏しさ、注意不足、てんかんの合併などで、自分自身に自信を失い、やり方の工夫も学べない中で過ごすと、鬱病を発症することもあります。
鬱病は、心のエネルギーが足りなくなったような状態で、最初は精神的な落ち込みがメインであっても、次第に食事や睡眠がおろそかになり、体が壊れていきます。
一方で、誰か気が付いてくれる人が居て、適切な治療を受けることで少しずつ改善する側面もあります。
ところが発達障害の場合、特徴的な障害に周囲の目が奪われてしまい、本人の困っていることや悩み事、気持ちの落ち込みにまで気が付かないことも多いのです。
また大人になってから判明するケースも多く、鬱病だと思って受診した結果、その背景にある障害が判明することもあります。
発達障害に効果が期待されている成分はあるの?
発達障害にまんべんなく効果を挙げる、というサプリメントや成分は今のところありません。
しかし症状や発達障害の状態に応じてサプリメントを活用することで、症状を緩和できたというケースが海外や日本で報告されています。
たとえば調理方法や食材にこだわりが強く、偏食でなかなかご飯を食べられない子どもが、サプリメントなら飲めたため栄養状態を保ちやすくなったというような例です。
しかし、サプリメントは不足しているものを補うことが目的になるので、まずは「本当にその成分が今の自分、子どもに不足しているだろうか」「今飲んでいる薬との飲み合わせは大丈夫か」と考えることが大切です。
たとえ薬との飲み合わせが悪くなくても、子どもは大人と同じ量のサプリメントを飲むと過剰摂取になってしまい、副作用が出たり、ほかの成分の吸収を阻害するリスクが高いのです。
また普段の食生活で栄養が十分に摂取できている場合、特にサプリメントを飲む必要がないこともよくあります。
だからこそ、まずは担当医にサプリメントの活用について相談し、今飲んでいる薬との飲み合わせや、摂取量などについて聞いてみることが大切です。
「そうは言っても効果があったという成分を知っておきたい」という人のために、飲んで困難に感じていることを解消する手助けになった、といわれている成分を3つ紹介します。
発達障害全般に、ビタミンB群
ビタミンB群は、さまざまな代謝を支える酵素の働きをサポートする補酵素として重要な成分であり、神経伝達に関わる神経細胞の働きを正常に保つことに活用されています。
主に体内でエネルギーを作ることに関与し、ビタミンB1単体などでは効果が出ないのも特徴です。そのためビタミンB群はその一群をトータルで摂取することが必要になります。
たとえばビタミンB6は脳の働きや神経伝達物質の生成に関与しており、ナイアシン(ビタミンB3)はエネルギーの生成や神経症状の予防などにも関わります。
ビタミンB12は血液の製造に関わるほか、アミノ酸や脂質の代謝に関わる補酵素の1つで、不足すると悪性貧血や神経障害が発生する原因となります。
ビタミンB群は穀物や豆類、肉類、魚介類、海藻、砂糖、卵など多種多様な食材に豊富に含まれており、私たちが日ごろから口にしやすいものがほとんどです。
そのためタンパク質や炭水化物、脂質、野菜、果物など多品目をバランスよく摂り入れた食事ができている場合、不足することはまずありません。
しかし食感や味、匂いなど食べ物の違いに対するこだわりが強く、食べられるものに制限が多い発達障害の場合、栄養として不足してしまうこともあります。
また仕事がうまくいかず、なかなか食事も難しい状況にある人は、ビタミンB群が不足する可能性があります。
こうした理由から、ビタミンB群の摂取量が著しく不足していた人が、サプリメントで摂取量を補うようにしたところ、うつ症状や不安の軽減、集中力維持がしやすくなったというケースもあります。
水溶性で尿とともに排出されるため、過剰摂取になりにくい成分ではありますが、内服前には主治医や薬剤師に相談を忘れずに行いましょう。
腸内環境改善に、乳酸菌
また自閉症のある子どもの腸内では、腸内細菌の種類がとても少ないことや、腸内環境が悪いことなどが指摘されています。
腸は成分や水分を吸収するほかにも、神経伝達物質の1つであるセロトニンを合成するのに必要なトリプトファンを、ビタミンB6を介して脳へと届けています。
これらの働きを阻害しないように腸内環境を整える、という目的で乳酸菌サプリメントが使われることもあります。
ただ腸に影響を及ぼすため、中には薬の作用を邪魔してしまうケースもあります。内服前には主治医や薬剤師への相談が必要です。
ADHDとの研究も多い、オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸とは、魚の油に豊富に含まれるDHAやEPA、DPA、えごまなどに含まれるαリノレン酸を指し、オメガ3(スリー)とも呼ばれます。
効果は非常に幅広く、悪玉コレステロールや中性脂肪値を下げる、内臓の不調を予防する、花粉症を和らげる、脳を活性化させ記憶力を維持しやすくするなど、様々です。
海外ではこのオメガ3脂肪酸値とADHDの症状に関する研究が2013年ごろから盛んになりつつありますが、本当に効果があるのかどうかは個人差も大きく、不明確なところが多いのが現状です。
もちろん、こちらも内服する前には主治医に相談をしておきましょう。
他にも注目されている成分はある?
他にも注目されている成分として「GABA」「レシチン」「コリン」「亜鉛」などが挙げられます。
興奮を抑制する、GABA
GABAはアミノ酸の1つであり、トマトやお茶、米、大豆にも含まれている成分です。
人間の体の中でも合成されており、その役目は脳内での神経の興奮を抑制するという機能です。気持ちを落ち着かせる、リラックスされるサプリメントに用いられるのは、そのためです。
実際に30mgのGABAを健康な12人の男性に摂取させた実験では、自律神経系に作用しリラクゼーション効果があった、とする報告もあります。
ただしこうしたリラックス効果が、強く出すぎる可能性もあります。
不用意に飲まないようにして、必ず主治医にも相談してみましょう。
脳内の細胞の伝達をよくする、レシチン・コリン
レシチンは人間の体内で、リン脂質として細胞膜や脳、神経組織の構成成分として活用される重要な成分です。
レシチンの別名をホスファチジルコリンというのですが、サプリメントの分野ではホスファチジルコリン100%ではなく10~20%を含むリン脂質混合物をレシチンと称しています。
またサプリメントでは、原料によってホスファチジルコリンの含有量が異なり、卵黄レシチンはホスファチジルコリンは69%近く含むものの、大豆レシチンでは24%前後です。
レシチンとコリンは別物のように扱われますが、厳密に言うとレシチンはホスファチジルコリンのことであり、食品や人間の体の中ではホスファチジルコリン(レシチン)の形をして存在しています。
また食物の中に存在するコリンは体内に入ると、レシチンの材料となります。
特に神経伝達に関わるのが、卵黄に含まれる卵黄レシチンで、ホスファチジルコリンが豊富です。
ホスファチジルコリンはアセチルコリンの原料となるため、不足しないようにすることがおすすめとされます。
一方で、摂取量が決められていません。そのため、どのくらいとれば効果が発揮されるのか、反対にどの程度の量を毎日摂るのがおすすめなのか、ということが不明確です。
例として、アメリカで長期的に妊婦に1日当たり750mgのホスファチジルコリンを摂取させた場合、特に母体に影響はなく、また乳児の脳機能の増強は見られなかったとする研究があります。
なお、コリンやレシチンは普段の食事からも、十分摂取できる栄養素です。
どうしても足りない場合、こうしたサプリメントの検討もありうるかもしれません。
タンパク質やDNA合成に必須、亜鉛
亜鉛はタンパク質やDNA合成に必要不可欠で、不足すると貧血や食欲不振、認知機能障害、脱毛、慢性的な下痢、免疫力低下など様々な症状を引き起こします。
魚介類や肉類、海藻、野菜、豆類、アーモンドなど種実類と様々な食品に含まれていることから、食品をまんべんなく摂ることができれば、不足する可能性は低い成分です。
しかし成長のために亜鉛がたくさん利用される小児では不足することもあり、高齢者において特に女性は5人に1人は亜鉛不足になっているとも言われます。
発達障害を持つ人にとって、食事は非常に大切です。治療のため、ということではなく、栄養素が欠乏することで他の病気を併発する危険があります。
他の病気が起きることで、発達障害に必要な治療が難しくなる可能性もあります。
また栄養素をきちんと摂ることはもちろん大切ですが、根拠の薄い食事療法に振り回されてしまうのも避けなくてはいけません。
高価なサプリメントを購入したとしても、本人の特性に合っていなければ飲めないこともあります。
「効果があるかもしれない」と、藁をもすがる思いで手を出しても、結果的にどんどん経済的に疲弊していく可能性があります。
食事という健康にかかわる重要な問題だからこそ、どんな栄養素が足りていないのか、どんな食材ならそれをカバーできるのか、慎重に考えることが大切です。