アミノ酸の代謝経路や糖新生を解説!糖原性とケト原性の違いとは?

アミノ酸の代謝経路を解説!

人間の体はたんぱく質を分解し、アミノ酸にしてから活用します。これは食べたタンパク質だけでなく、筋肉も同じです。

アミノ酸の活用先は筋肉や血液、爪、髪、皮膚、骨、免疫抗体の元などから、ホルモン、ヘモグロビン、そしてエネルギー源まで多種多様です。

エネルギー源となるとき、タンパク質からアミノ酸へ分解され、さらにアミノ酸がばらばらに分解されます。

アミノ酸はH(水素)、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)の4つを基本に、アミノ酸の種類によってはS(硫黄)を含む全5種類の元素で形作られています。

その基本の形は「H2N」というアミノ基の部分と、CとH、そして「COOH」とつながるカルボキシル基が手をそれぞれ繋いだ状態です。

ここに側鎖というアミノ酸ごと異なる部分が繋がり、体を構成する20種類のアミノ酸それぞれを形作っています。

タンパク質がアミノ酸になるまで

まずタンパク質を摂取すると、胃の中で胃酸と分解酵素の1つであるペプシンにより、次に分解する小腸に送られやすい形になります。

さらに小腸では、膵臓から分泌される膵液の酵素によって、ペプチドの状態まで分解されます。

ペプチドとはアミノ酸が2~20個ほど結合したもので、タンパク質よりは小さいものの、アミノ酸よりもサイズ的には大きいため、まだまだ吸収しにくい状態です。

さらにここで、小腸の粘膜上皮からペプチラーゼという酵素が分泌され、アミノ酸になるまで小さく分解され、ようやく小腸の粘膜より吸収されます。

タンパク質がアミノ酸として吸収されるまでにはこのように多くのステップが必要なので、アミノ酸飲料やサプリメントの方が、アミノ酸の吸収速度で見ればタンパク質よりもスピーディーとされます。

アミノ酸がさらに分解されるとエネルギー源になる

アミノ酸はジグソーパズルのピースのようなもので、それぞれ独自の仕組みを持ち、特有の形を持ってはいますが、どのアミノ酸にも共通の形をもつ部分があります。

このアミノ酸の共通の形となる部分は炭素部分とアンモニア部分の2つからできています。

アミノ酸が代謝されるとき、炭素部分は「糖新生」や「ケトン体の合成」に使用されます。この2つの働きは、どちらも糖分などを使わずにエネルギーを生み出す仕組みです。

「糖新生」は糖質以外のものを新たな糖に作り変える素を生み出し、活用する仕組みのことです。

「ケトン体の合成」では、アミノ酸がケトン体となることで、体の蓄えがなくなってしまった時に備えます。

ケトン体とは「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」「アセトン」という3つの物質の総称であり、糖さえも使い切ってしまった時のエネルギー源となります。

で使えるエネルギー源はブドウ糖がメインですが、脂肪を分解することで得られる脂肪酸は脳では使えません。しかしケトン体は使えるため、体にとってとても重要な仕組みです。

そしてアンモニア部分は肝臓へ送られて、尿素回路というものを通じて尿素となり、無毒化されます。

糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸の違いとは?

糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸の違いは「エネルギーを生み出すために使われる代謝経路が違う」ということです。

糖原性アミノ酸は、糖へと変わることができるアミノ酸を指します。先ほど説明した、糖新生を行うアミノ酸のことです。

そしてケト原性アミノ酸は、ケトン体へ変わることができるアミノを指します。

アミノ酸によって両方の働きを兼ねるもの、片方でしか働けないものがあります。それでは、それぞれの代謝の違いを見ていきましょう。

糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸の違いとは?

糖原性アミノ酸とケト原性アミノ酸の代謝をそれぞれ解説!

まずは糖原性アミノ酸は体を構成する20種類のアミノ酸のうち、ケト原性アミノ酸としての働きしかできない「リジンロイシン以外のアミノ酸全て」です。

糖新生系へ向かうために、クエン酸回路(TCA回路)に欠かせない物質に変化する必要があります。

様々な代謝経路がある糖原性アミノ酸

糖原性アミノ酸は、クエン酸回路でエネルギー生産に必要な、ピルビン酸、オキサロ酢酸やフマル酸、α-ケトグルタル酸、スクシニルCoAになる必要があります。

クエン酸回路は人間にとって最も重要な生化学反応回路であり、ミトコンドリアの中で行われ、非常に効率よくエネルギーを生産します。

ピルビン酸はトリプトファンがアラニンに変化して生成される場合と、グリシンがセリンとなり、システインとともにピルビン酸になる場合があります。

ピルビン酸はアセチルCoAに代わり、クエン酸回路へと入っていきます。

さらにアスパラギンはアスパラギン酸になり、オキサロ酢酸へと変わっていきます。オキサロ酢酸はクエン酸回路の材料の1つです。

またこのほかにも、アルギニンとヒスチジン、プロリン、グルタミンが合わさって出来るグルタミン酸がα-ケトグルタル酸になります。

イソロイシンとメチオニン、バリンはスクシニルCoAに変わり、こちらもクエン酸回路の材料の1つになります。

フェニルアラニンはチロシンの材料となり、さらにチロシンはフマル酸となって、クエン酸回路を動かしていきます。

これらがそれぞれの個所で働くことで、糖新生が行われていくのです。

ケト原性アミノ酸はどうなる?

ケトン体を作り出すケト原性アミノ酸は、トリプトファンとリジン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、イソロイシンの6つ、もしくはここにスレオニンを含めた7種類です。

このうち、ケト原性アミノ酸としてしか働けないアミノ酸は、リジンとロイシンです

スレオニンとイソロイシン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンの5種類は、ケトン体にも糖にもなれるアミノ酸です。

トリプトファンとロイシン、リジンはアセトアセチルCoAになれます。またスレオニンとイソロイシンはアセチルCoAにそのままなることができます。

フェニルアラニンはチロシンになり、チロシンがさらにアセト酢酸になるとアセトアセチルCoAに変換され、クエン酸回路へ入っていきます。

ケトン体は肝臓で作られますが、肝臓では消費できません。これは「肝臓で間違ってエネルギーとして使わないように」するためです。

ケトン体は水に溶ける性質を持っているため、特別何かに運んでもらう必要がないので、脳など様々な部位でエネルギーとして活躍します。

ケトン体のうち、エネルギーとして使われるのはアセト酢酸のみで、β-ヒドロキシ酪酸は一度アセト酢酸に変換されてから使用されます。

一方アセトンはアルコールのように揮発性が高いため、呼気中に排出されるのですが、これは強くなると甘酸っぱいにおいになります。

糖をうまく代謝できず、代わりに脂肪などを使ってケトン体をエネルギー源として使われるようになった結果起きるため、糖尿病の人やダイエットで糖を過剰にカットしている人に起きやすいと言われます。

アミノ酸で摂取するのは難しい?

こうなると、タンパク質を摂るよりアミノ酸を摂った方が良い、と考える方もいるかもしれません。

しかしアミノ酸サプリメントなどで必要な量のアミノ酸を賄おうとすると、非常にたくさんの量を摂らなくてはならず、またお金もとてもかかってしまいます。

一方でタンパク質はアミノ酸スコア100のものを選べばアミノ酸も十分摂ることができ、なおかつとても気軽に手に入るほか、アミノ酸以外の栄養分も摂れるためおすすめとされるのです。