アミノ酸合成の仕組みを解説!合成できない必須アミノ酸とは?

そもそもアミノ酸合成とは?

アミノ酸の合成は、人間の体内で様々な目的で行われます。

まず第一に、タンパク質として合成され、体を構成する細胞を作り出します。

このほかにも糖新生におけるグルコース合成でのエネルギー産生、脂肪酸・ケトン体・コレステロールの合成などにも原料として使われます。

様々な過程で使われた後、アミノ酸は最終的にそのほとんどが水と二酸化炭素となって体外に排出されます。

つまり体を構成し、エネルギーを生み出し、日々私たちが生きていく中で繰り返し行われる生体内の反応の1つがアミノ酸合成です。

また、生物の体内で簡単な化合物から複雑な化合物を生成することを、生合成と言います。

これは私たちが食物を食べた後、体内で分解されより簡単な物質に代謝されていく過程とは違い、補給や貯蔵にも関与してます。

タンパク質合成に必要なアミノ酸の合成は、いずれの場合もエネルギーや原料となる化合物の無駄がほとんどありません。

ただし、これは生物によって大きく異なります。

たとえば植物は自分自身に必要なアミノ酸をすべて合成できますが、人間は一部のアミノ酸しか合成できません。

これが、必須アミノ酸と非必須アミノ酸を分ける理由にもなっています。

必須アミノ酸、非必須アミノ酸の違いとは?

必須アミノ酸と非必須アミノ酸の大きな違いは「体内で合成できるアミノ酸かどうか」という点であり、栄養学的な側面からみた分け方です。

非必須アミノ酸は体内である程度の量を合成することが可能であり、食事から摂取する必要は栄養学的にはありません。

ただ、実際は必須アミノ酸がないと非必須アミノ酸を合成できないこともあるため、どちらもまんべんなく摂取することが大切です。

必須アミノ酸は非効率?

必須アミノ酸にあたるバリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンヒスチジンの9種類は食事から補給することが前提です。

その理由として、体内でこれらのアミノ酸を生成しようとすると、非常に多くの酵素が必要であり、手間がかかることが挙げられます。

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自然界の食物には必須アミノ酸を十分に含む肉や魚、豆類が豊富に存在するため、自分で合成するより栄養として他から摂取する方が効率が良いのです。

一番最初に述べたように、生合成で行われる合成はエネルギーにも材料にも無駄が少なく、たとえ限られた食べ物しか得られなかったとしても、人間がある程度生きていけるような仕組みになっています。

そのため作り出すのが大変な必須アミノ酸を外部から補給することで、私たちの体はより効率よくアミノ酸と付き合っています。

必須アミノ酸、非必須アミノ酸の違いとは?

非必須アミノ酸生合成の仕組みを解説!

非必須アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリン、チロシンの11種類です。

必須アミノ酸の数と合わせてみると分かるように、人間の体を合成するアミノ酸は、実は20種類しかありません。

非必須アミノ酸は人間の細胞内で合成され、生物学的な代謝経路において作り出されます。

アミノ酸の合成経路は非常に多種多様で、一口にはどういう仕組みかは説明しきれません。

しかし、その過程にはそれぞれ酵素が関与しており、また経由する中間代謝物の種類に応じて4つに分けることができます。

その4つとはオキサロ酢酸、ピルビン酸、2-オキソグルタル酸、3-ホスホグリセリン酸です。

酵素自体もタンパク質でできていますから、体を作るのにも、体の中の仕組みを動かすのにも、アミノ酸の生合成やタンパク質合成は非常に重要な仕組みです。

ただ必須アミノ酸の1つであるフェニルアラニンから合成されるチロシンは、この4つのうちから外れた例外です。

オキサロ酢酸経由

オキサロ酢酸は、クエン酸回路というエネルギー産生の場においてその一部を担う存在です。

オキサロ酢酸からアスパラギン酸が作られ、アスパラギンシンターゼという酵素の働きで、アスパラギン酸とグルタミンからアスパラギンが生合成されます。

ピルビン酸経由

ピルビン酸も、クエン酸回路に関わる物質であり、3-ホスホグリセリン酸から合成されます。

炭水化物が代謝されることで得られる物質であり、タンパク質と炭水化物の代謝を繋ぐ役目を持ちます。

つまりピルビン酸を通して、私たちはタンパク質をエネルギーにすることも、炭水化物をエネルギーにすることもどちらも可能になっているのです。

ピルビン酸からはアミノトランスフェラーゼ(アミノ基転移酵素)がかかわり、アラニンが生合成されますが、この時グルタミン酸も関与しています。

アラニンは非必須アミノ酸の中でもすべてのたんぱく質に一番広く存在しており、さらにグルコースにも一番変わりやすい、つまりエネルギーになりやすいアミノ酸です。

ここからオキサロ酢酸のアミノ酸基転移反応の過程で、アスパラギン酸が生成されます。

なおピルビン酸からはバリン、ロイシン、イソロイシンという必須アミノ酸もピルビン酸からアミノ基転移反応が進んで生成されるα-ケト酸より反応が進むことで生合成されます。

しかし生合成されたとしても、すぐに分解されてしまいます。

2-オキソグルタル酸経由

こちらもクエン酸回路に深くかかわる物質であり、グルタミンとグルタミン酸、プロリン、アルギニンの4つの非必須アミノ酸が生合成されます。

グルタミン酸デヒドロゲナーゼという酵素の働きで、まずα-ケトグルタル酸からグルタミン酸に還元され、さらにグルタミンシンテターゼの働きでグルタミンが合成されます。

この時、アンモニアも合成に関与しますが、過剰に発生した場合はグルタミンとして肝臓に運ばれるため、増えすぎる心配はありません。

このグルタミン酸から非酵素的にプロリンが、そして尿素回路を通じてアルギニンが作られます。

3-ホスホグリセリン酸群経由

セリン、グリシン、システインの3つの非必須アミノ酸が生合成されます。

セリンの場合は、解糖系の中間物質に対し、グルタミンが関与して合成されます。解糖系とは、グルコースからエネルギーを作り出す反応の一番最初の部分のことです。

またグリシンはグリシントランスアミラーゼの働きで合成され、セリンやコリンからも作られます。

システインはメチオニンとセリンから生合成されるため、この2つは深くかかわっています。

フェニルアラニンとチロシン

必須アミノ酸であるフェニルアラニンに対し、フェニルアラニンヒドロキシラーゼという酵素が働きかけることで、非必須アミノ酸のチロシンが生合成されます。

しかし、稀に生まれつきこの酵素の働きが非常に弱く、フェニルアラニンが体に蓄積し、反対にチロシンが少なくなる生まれつきの難病を抱えている人もいます。

フェニルケトン尿症と言い、色素を作る元となるチロシンが少ないため髪や皮膚の色が薄くなり、フェニルアラニンの蓄積に伴う精神発達障害がみられます。

難病指定の病気ではありますが、早期発見と治療を正しく行うことで、生涯にわたって症状をコントロールすることが可能です。

アミノ酸の合成反応は多種多様

今回解説したのは、アミノ酸の生合成の中ではごく一部の反応であり、また文章だけでは分かりにくい部分も多々あります。

普段生きていくうちで関わる範囲で言うのなら、必須アミノ酸と非必須アミノ酸をバランスよく摂取することが、こうしたアミノ酸の生合成を過不足なく行うのに必須です。