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肝臓におけるアミノ酸合成・分解の仕組みを解説!
アミノ酸には、必須アミノ酸と呼ばれる「食事から摂り入れたいアミノ酸」と非必須アミノ酸と呼ばれる「体内で合成できるアミノ酸」の2つがあります。
そもそもタンパク質は、まず胃で細かく分解され「ペプシノーゲン+胃酸」の働きにより「ペプトン」という物質になります。
そして小腸で「エレプシン」と「トリプシン(トリプシノーゲン+膵液)」の働きでやっと「アミノ酸」まで分解されます。
「あれ、ここまでに肝臓が出てこないぞ」と思う方もいるかもしれません。アミノ酸まで分解されてからが、肝臓の出番です。
栄養の詰まった血液が肝臓に流れ込む
小腸で栄養をしっかり吸収した後、肝臓は「門脈」と呼ばれる特別な静脈を通過し、肝臓へ入ります。
肝臓の見た目はまさに焼き肉屋などで出されるレバーそのものの、赤褐色色です。その重さはなんと1kgから1.4kgにも相当する、とても大きな臓器です。
人体に流れる血液のうち10~14%が常に通過しながら蓄えられ、そのほとんどが小腸を通過してきた過程で栄養をたっぷりと含んだ静脈血です。
肝臓の役目は大きく分けて5つあり「栄養素の作り替え」「血糖の調整」「胆汁の生成」「解毒作用(有害物質の無毒化)」「血液凝固因子の生成」が挙げられます。
この「栄養素の作り替え」において、肝臓は流れ込んだ栄養をたっぷり含む静脈血からアミノ酸をとりだし、人間に必要なタンパク質に組み替えて、体の必要な場所へ送り出します。
この時に使われる多くが、必須アミノ酸です。体で作ることができない必須アミノ酸が不足すると、体の中で必要とする場所に適切なタンパク質が届かなくなってしまいます。
その中でも代表格なのが、血中にあるアルブミンという血漿タンパク質やフィブリノーゲンといった「血液凝固因子」です。これらもアミノ酸を特定の並び順にして作り出した、タンパク質でできています。
肝臓は1日当たり25g近くこうした血漿タンパク質を作り出し、タンパク質全体では毎日およそ50gもの量を合成しています。
特に多いのがアルブミンで、これは血液の水分を保つ役割(浸透圧の維持)と体内の物質を運搬する作用を持っているため、カルシウムや亜鉛、ホルモン、脂肪酸、酵素なども運んでくれます。
その運搬するための物質と結合しあう強さを利用して、体内に毒物が入ってきた場合は結合して中和させる働きも持ちます。
このように体に役立つ物質やエネルギーを、人間の体の中で必要に応じて合成する仕組みを「代謝」と呼びます。
アミノ酸の分解も行っている
しかし中には使われずに余ってしまうアミノ酸や、あるいは役目を終えたタンパク質は、最終的に肝臓へと戻ってきます。
これを肝臓は分解し窒素酸化物というものへ変えてしまいます。そしてアンモニアを経て、尿素という無害な物質になったところで、尿へと排出されます。
こうした体に入ってきた物質を、最終的に無害な物質に変える過程にも、アミノ酸は役立っています。その1つが、アルコールの代謝です。
アミノ酸は肝臓でのアルコール分解を助けてくれる?
アルコールはお酒を飲んでから1~2時間ほどで体内に吸収されますが、この時消化はされません。そのまま肝臓に突入し、すぐにアルコール分解が始まりますが、追いつかないため全身に回ります。
酔いが回った状態だと、人によっては顔が赤くなったり、動悸や頭痛がします。この間に、肝臓はアルコールをアルコール脱水素酵素という酵素の働きでアセトアルデヒドという物質に換えます。
アセトアルデヒドは有毒なため、このままでは肝臓から外に出ず、他の臓器に行く前にもう1つの酵素の働きで酢酸という無毒なものに変えて、その後は筋肉や心臓、他の臓器で分解されます。
すると最終的に炭酸ガスと水になるのですが、遺伝的な酵素の働きの強さ、肝臓の大きさに応じて、アルコールの分解速度が人ごとに大きく異なり、これが「お酒への強さ」として現れます。
アミノ酸のうち、アラニンやグルタミンは糖原性アミノ酸と言い、特にアラニンは肝臓のエネルギー源として重要です。
肝臓の働きを高めることで、肝臓が持つ解毒作用やアルコール代謝の促進につながる可能性が挙げられています。
もしくは、アラニンとグルタミンが糖新生で消費される過程で、アルコールの代謝で発生した物質を消費してしまい、結果としてアルコール代謝が進んだ可能性が挙げられています。
他にもグリシンにはアルコール性肝障害抑制効果が期待できるとして、注目されています。
アミノ酸によってアンモニアなどの毒素が除去される?
肝臓は余ったアミノ酸やタンパク質を分解し、最終的に尿素という無害な物質になったところで、尿へと排出することを先に説明しました。
このアンモニアなどの毒素の除去についても、アミノ酸が深くかかわります。ただアミノ酸がそのまま毒素を連れ去ってくれる、というわけではありません。
アミノ酸を適切に摂取することで、肝臓の毒素除去機能を保ち、健康に保つ効果が期待されるのです。
肝臓の解毒能力を強化するアミノ酸は?
アミノ酸からのたんぱく質の合成や分解、糖や脂質、ビタミンの貯蓄など、様々な働きを行う肝臓の細胞は再生能力が非常に高いことでも知られます。
この再生能力でもカバーできないほど栄養が増えると、やがてそれは深いダメージとして肝臓に残りますが、肝臓は一部が働けなくなっても他で自分の働きをカバーしてしまいます。
すると体調としては変わりなく過ごせることも多く、重症化するまで分からないこともしばしばです。
したがって、毎日のアミノ酸の摂取が重要となります。
特に注目したいのが、硫黄を含んでいるアミノ酸「含硫アミノ酸」です。
含硫アミノ酸は、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑えて、動脈硬化を予防すると言われています。
イカやタコに豊富、タウリン
タウリンは正確には含硫アミノ酸様化合物で、厳密に言えばアミノ酸ではありませんが、肝臓に対する効果の高さで知られています。
肝臓の働きを活発にし、アルコール障害にも効果的で、正しい血圧の維持やコレステロール・中性脂肪の減少効果が期待できます。
必須アミノ酸の1つ、スレオニン(トレオニン)
必須アミノ酸の中で最も最初に発見されたアミノ酸で、食事からタンパク質を食べた後、実際に体内で使用する際に必須です。
細胞を新しく作る他、成長を促す働きがあり、また肝臓に対しては脂肪が蓄積しないように予防する働きがあります。
肝臓は脂肪代謝機能を持ちますが、あまりに脂質が多くなりすぎると代謝しきれず、やがて中性脂肪が溜まり、最終的に肝臓はその機能を衰えさせてしまいます。
特に穀物にはスレオニンが不足しがちなため、普段からお米など穀物が主原料となるものばかり摂っている人は注意が必要です。
ヒスタミンの濃度を下げる、メチオニン
私たちの体には、ヒスタミンという物質があります。本来は病原体を排除するために欠かせませんが、多くなりすぎるとアレルギー症状の原因となります。
必須アミノ酸の1つであるメチオニンは、このヒスタミンの濃度を下げるほか、脂質などの排出、肝機能の維持に効果があるとされています。