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アミノ酸肥料は効果ある?吸収されるの?
アミノ酸のイメージとして多いのは「調味料」としてのアミノ酸や「疲労回復」のサプリメント、あるいは「アミノ酸洗顔料」ではないでしょうか。
アミノ酸は自然界には500種類近く存在し、一定の仕組みに沿って結合しあうことで様々な働きを示します。
一定数集まるとペプチドという物質を構成し、さらに多く集まるとタンパク質として成り立つ有機窒素化合物です。
人間にとっては筋肉や骨、皮膚、粘膜、髪、爪などを構成するほか、臓器やエネルギー源、ホルモンの材料としてもとても重要な物質です。
また植物においても、タンパク質は体を構成する細胞のもとであり、繊維部分は炭水化物で作られています。
このアミノ酸をはじめとする有機物を大量に含んでいる肥料が、有機肥料(有機質肥料)です。
植物は窒素を吸収して体の中で亜硝酸という成分からアンモニアへ変換し、さらにグルタミンなど各種アミノ酸を作り、タンパク質にすることで体を構成する細胞を増やしています。
この時、エネルギーとして光合成して作り出した炭水化物を消費しますが、天候不順や植物の環境によっては光合成を十分にできず、育つためのエネルギーが不足してしまいます。
アミノ酸肥料は、アミノ酸を植物へ直接吸収させることで、葉っぱに炭水化物がなかったとしても、植物は体を構成する細胞のもとであるタンパク質を作り続けるという効果を狙った肥料です。
すると植物自体の炭水化物の消費量を抑えることができるため、作物が弱っているときや天気が悪い日が続いている時期も成長が期待できます。
また炭水化物が消費されにくくなると、植物にはより多くの糖分(炭水化物)が残ります。するとより甘くうま味のある作物に育ったり、安定して大きく成長させたりするとされます。
さらに、アミノ酸肥料は土に混ぜ込むと土の中の微生物の餌にもなるため、土壌を改善する効果も期待できます。
アミノ酸肥料はコメヌカ油カスといったタンパク質そのものの他、ゼラチンを加水分解した液状の肥料など、さまざまなタイプがあります。
他の肥料と比較したアミノ酸肥料の特徴やメリットを解説!
アミノ酸肥料とよく比較されるのが、化学肥料です。化学肥料のメリットと特徴を、アミノ酸肥料と比較しつつ説明します。
化学肥料は即効型、アミノ酸肥料はゆっくり型
化学肥料は鉱石や空気中に含まれる窒素など、無機物を原料にした肥料です。
大きなメリットとして、水に溶けやすいため根から吸収される速度も速く、肥料として施した後にすぐ効果を発揮してくれます。
したがって肥料として与える際に、労力がかからないのもメリットの1つです。
一方で有機肥料の場合、先に説明したように、コメヌカ油カスなどが原料となっているため、最初に土に混ぜ込む場合(元肥)と後から数回に分けて適量撒く方法(追肥)があります。
これはアミノ酸肥料の形状によっても異なりますが、たとえばコメヌカや牡蠣殻などはしっかりと土壌へ混ぜ込む必要があります。
また、もともとの土壌の栄養状態や土の様子などに応じ撒く量も変わるため、使いやすさと手軽さは化学肥料の方がメリットが大きいと言えます。
そして、アミノ酸肥料は使ってすぐには作物を植えられない場合もあります。
化学肥料はすぐに作付け(農作物を植える)が可能ですが、アミノ酸肥料の場合は土壌微生物が分解する過程で熱が発生するため、根が直接肥料に触れないようにするなど、工夫が必要です。
しかしじわじわと効果を発揮するため、化学肥料で起きやすい過剰施用の心配が少なく、農作物にとっては健全な生育環境を整えることができます。
アミノ酸有機肥料の中には、アミノ酸やペプチドをメインとした液状の肥料もあります。
このタイプは吸収スピードも速いため、化学肥料のように即効性が期待できます。
土そのものの改善を行ってくれるアミノ酸肥料
化学肥料は成分自体にムラがないため、初心者でも「この広さのこの作物には○○gを散布する」というように、明確に必要量が分かります。
しかし長い間使うと、土の中の有機物がどんどん減少してしまいます。
一方でアミノ酸肥料は緩やかに効果を与えつつ、土壌の微生物も増えることで通気性や保水性の良い土を作る手助けをしてくれます。
それ自体が有機物ですから、土中の有機物が減る心配もありません。
土壌の養分を増やし、物質循環を改善させ、肥料を保つ力を高めることで土自体の改善を行ってくれます。
良い土にしていくことで、生産と収穫量の安定化や品質向上が期待できるのも、アミノ酸肥料の大きなメリットでしょう。
化学肥料とアミノ酸有機肥料を上手に使っていく
アミノ酸有機肥料は「作物をよりおいしく甘みのあるものにしたい」「低い温度や日照不足にも強い栽培を目指していきたい」という場合におすすめです。
しかし即効性はあまり高くなく、農園の環境ごとに散布すべき量が違い、また微生物が分解する過程で発酵されるため、その発酵臭に引かれた虫による食害が起こることもあります。
ものにもよりますが、アミノ酸有機肥料はタンパク質をペプチドやアミノ酸まで分解したうえで肥料に混ぜ込んでいることがほとんどです。
すると肥料にするまでタンパク質をアミノ酸へ分解する手間がかかるため、コストが化学肥料より高くなる傾向にあります。
したがって、化学肥料とアミノ酸有機肥料を上手に組み合わせ、互いの特徴を生かすことで弱点を補っていくことが必要になります。
最初から肥料として適度に混合されている商品もあるため、自分の育成する畑の範囲や作物内容にも応じて活用することが大切です。
アミノ酸肥料の動物性と植物性の違いとは?
アミノ酸有機肥料には、動物性と植物性があります。
そもそもタンパク質にも、肉や魚といった動物性タンパク質と、大豆など豆類を中心とする植物性タンパク質があります。
アミノ酸有機肥料の場合は、植物由来の成分が使われているか、それとも動物由来の成分が使われているかがその違いとなります。
動物性肥料の場合は、魚粉や肉かす粉末、肉骨粉、家畜堆肥などが挙げられます。
また植物性肥料の場合は菜種油かすや大豆油かす、コメヌカ油かすが使用されています。
原材料自体の違いとともに、動物性肥料の方がよりアミノ酸が多く、植物性肥料の方がアミノ酸以外の成分(ミネラルなど)が多いのが特徴です。
特に植物性肥料はカリウムが豊富なため、植物の根をしっかり張らせたい場合に効果的で、中でも大豆油かすは有機肥料の中でも最も効果が早いと言われます。
一方で動物性肥料の場合は、アミノ酸が豊富です。骨粉は特にゆっくりと効果を発揮しやすく、元肥として高い効果を示します。
また化学肥料と同じくらい効果が早いものとして知られるのは、鶏糞を発酵させた家畜堆肥です。
液状のものとしては、ゼラチンを加水分解した肥料があります。液状のアミノ酸肥料は散布が手軽で吸収率も高くなっているものが多いため、天候不順が多い冬場の作物にもおすすめです。