目次
そもそも大麻とは?どんな成分を含んでいるのか
大麻とは、植物である麻の花や葉の部分を加工したものを指します。
大麻の使用用途は、産業用、医療用、嗜好用に分類されることが一般的です。
産業用の場合、茎などの繊維が衣類やカバンなどに利用されます。
医療用・嗜好用の場合は、花の穂や葉などが利用され使用されます。主な有効成分はTHC(テトラヒドロカンナビノール )とCBD(カンナビジオール)の2つです。
日本における大麻の法的立ち位置
そもそも日本では大麻取締法によって、大麻の所持は禁止されており、認可を受けた農家を除いて栽培も禁止されています。
THCはハイになる・幻覚を見せる作用がある危険な成分として、厳しく規制されています。
一方、CBDに違法性はなく、リラックス作用をもたらす商品として販売されているCBDオイルは日本でも購入可能です。
CBDオイルとは?効果や効能はない?副作用についても解説!日本における大麻の歴史
そもそも戦前の日本では、農家で自由に大麻の栽培を行うことができました。江戸時代には紅花、藍とともに三草のうちの一つとして重宝されて使用されていました。
大麻の規制が強化されたのは第二次世界大戦後です。1948年GHQの指導により、大麻取締法が制定され、一切禁止となりました。
国家神道と軍国主義が密接に関連していると分析したGHQは、神道において多く使用される麻の使用を禁止する決定を下したと言われています。
こうした背景を持つ日本では、大麻に対する社会的規範も強固で、諸外国とは違って大麻合法化についての議論も活発ではありません。
また、基本的に研究用途での大麻の使用も禁止されているため、自国でその作用や安全性について調べることができないという事情もあります。
世界における大麻合法化の流れと歴史
2010年代以降、ヨーロッパ、北米諸国において大麻を合法化する国が増えています。
ヨーロッパでは、1996年にいち早く非刑罰化したオランダをはじめ、近年関連法を定め直す国が増えています。
嗜好用大麻に関しては2006年にスペインが、医療用大麻に関しては2017年にドイツが、2018年にイギリスが実質的に使用を認めています。
また、2018年にはカナダが嗜好用大麻を合法化したことが話題となりました。アメリカにおいても合法化の動き・議論は盛んで、各州で法律の見直しが相次いでいます。
アメリカの大麻合法化の流れは今後日本にも影響をもたらす可能性があると言われています。ここではアメリカの大麻の歴史を簡単に振り返ります。
アメリカにおける大麻合法化までの歴史
長らくアメリカにおいて大麻はヘロインやLSDと同じ規制レベルにあり、危険性も高いという法的位置付けがなされてきました。
大麻が規制されるようになった直接の原因を説明するため、1920年から1933年まで続いた禁酒法時代について説明しましょう。
第一次世界大戦後のアメリカではアルコールの中毒性・危険性に対する声が盛り上がり、1920年アルコールの販売・飲酒を禁止する禁酒法が制定されました。
しかしその結果、マフィアなどが密造酒を製造・販売し、莫大な利益を得ることで力をつけ、犯罪の増加、治安の悪化に繋がりました。これに対し連邦捜査局も大規模な捜査網で対抗し、犯罪組織との間で激しい攻防が続きました。
禁酒法が犯罪の増加に繋がっているという議論の高まりから、1933年に禁酒法はついに廃止されましたが、ここで仕事を失ったのが連邦捜査員たちです。
アメリカ政府は仕事を失った連邦捜査員たちの捜査対象を確保するために、大麻の取り締まりを強化したと言われているのです。
これに合わせて大麻を持ち込むことが多かったメキシコ人への嫌悪感がこの流れに拍車をかけたとされています。
その結果1937年に制定されたのが、大麻に対して極端に高い税金をかけることで実質的に大麻の流通を禁止した大麻課税法です。
後にこの歪んだ構造の法律に対して議論が湧き上がり、薬物規制法の中に大麻を入れるべきという案が浮上します。
1970年アメリカ政府は、大麻に関して科学調査ができていないとして報告書の作成を命じます。しかし2年後に挙がってきた報告書はアメリカ政府には都合の悪いものでした。
報告書では、大麻の危険性や依存度がアルコールに比べて低いとされていたのです。大麻が反ベトナム戦争の勢力、ヒッピーカルチャーと結びついていたこともあり、大麻規制の強化を目論んでいたアメリカ政府はこの報告書の受け取りを拒否しました。
近年のアメリカにおける大麻合法化の流れ
2010年代になってから大麻合法化の動きは活発化しました。抗がん剤の副作用、うつ病、てんかんへの有効性が指摘されるようになり、医療用大麻の合法化が各州で進みました。
2014年には、合法州における連邦捜査局による逮捕が禁止する法律が可決されることで、連邦法、州法の整合性に関しても問題がなくなり、大麻関連市場も拡大することになりました。
以下アメリカの州ごとの大麻の法的規制についてまとめました。(2019年6月現在)
法的規制 | 州 |
---|---|
嗜好用・医療用大麻が合法 | アラスカ州 カリフォルニア州 コロラド州 イリノイ州 メイン州 マサチューセッツ州 ミシガン州 ネバダ州 オレゴン州 バーモント州 ワシントン州 コロンビア特別区 |
医療用大麻のみ | モンタナ州 ノースダコタ州 ミネソタ州 ユタ州 アリゾナ州 ニューメキシコ州 ミズーリ州 オクラホマ州 アーカンソー州 ルイジアナ州 ニューハンプシャー州 コネチカット州 ニューヨーク州 ニュージャージー州 デラウェア州 メリーランド州 ロードアイランド州 ペンシルベニア州 オハイオ州 ウエストバージニア州 フロリダ州 ハワイ州 |
非合法または一部の例外を除き非合法 | アラバマ州 ジョージア州 アイダホ州 インディアナ州 アイオワ州 カンザス州 ケンタッキー州 ミシシッピ州 ネブラスカ州 ノースカロライナ州 サウスカロライナ州 サウスダコタ州 テネシー州 テキサス州 バージニア州 ウィスコンシン州 ワイオミング州 |
・大麻は連邦法下では未だにスケジュールIに分類されてます
・インディアン居留地においては州法が適用されない場合があります
・各州内で連邦政府が所有する連邦領土内において大麻は違法となります
・非合法に分類した州においてもごく限られた医療目的のTHCに関しては使用できることがあります
・合法に分類した州に関しては非犯罪化という対応によって実質的に使用を認めている州も含みます
合法化の動きは日本にも来るのか?合法化される理由・メリット
嗜好用大麻が解禁された州に行けば、日本では考えられないほど大麻を身近に感じることになるでしょう。
合法化された州では、幹線道路沿いにマリファナ商品の大きな看板があり、Googleマップで検索すれば多くの路面店を見つけることができます。
路面店といっても、アンダーグラウンドな雰囲気は全くなく、むしろ清潔かつお洒落な雰囲気のお店が多いのです。
商品としては、電子タバコのような商品から、クッキーやグミなどのお菓子、エナジードリンクなどの飲料まで様々です。
一般的に挙がることが多い大麻合法化の理由・メリットを3つご紹介します
大麻の成分によって疾病の治療が可能になる
前述したように、大麻の成分にてんかんの発作やうつへの効果があるとする研究結果もあります。
他の医薬品では治療が困難な疾病に効果があるかもしれない大麻を解禁すべきという主張が根強くあります。
大麻関連市場の拡大
他に大麻合法化のメリットとして挙げられるのが関連市場の成長による経済効果です。合法・非合法を含めると、大麻関連市場はアメリカだけで6兆円と言われています。
Paypalの創業者であり投資家のピーター・ティール氏が数百億円単位で投資を進めるなど、著名人の市場参入も話題になっています。
現在アメリカでは路面店や製造メーカーはもちろん、ポータルサイトや郵送サービスが立ち上がるなどビジネスとしても注目されています。
また大麻の使用が禁止されている周辺の州や国家から、観光収入が見込めるという面もあります。
犯罪の抑制と税収の拡大
大麻が裏社会、犯罪組織を中心に広まっている場合には、合法化して政府が管理したほうが、犯罪組織の弱体化につながるという主張がよくなされます。
また、大麻に課税をすることで税収が見込めるという側面もあります。実際にアメリカで合法化が決定する際には大麻からの税収によって新たな政策が実行できるという点で賛同者が増えるという経緯がありました。
日本においては、法律でJT(日本タバコ産業株式会社)にタバコに関連する権限を独占的に与えることによって、タバコの販売や税収を管理している構造に近いと言えるでしょう。
大麻に対する専門家の意見
最後に、薬剤師や看護師等で構成されたサプリポート編集部の大麻に関する2019年時点の見解をご紹介させて頂きます。
質問1:CBDはストレスや睡眠でお悩みの方におすすめできますか
現時点では、CBDをストレスや睡眠で悩む人にすぐおすすめはできないと考えます。
その理由は、CBDを使用しても根本的な解決にならない可能性が高く、自分にとって必要な量の見極めが現時点ではまだ難しいからです。
ストレスや睡眠不足の原因は仕事や家庭事情、友人関係、自分自身の気持ち、身体の性質など多岐にわたります。
たしかにCBDはお酒やたばこのように、そうしたストレスから一時的に開放してくれるかもしれませんが、最終的には「原因が解決していない」ことに本人が気づき、より「多くのCBDを使用する」ことを選択してしまう可能性もあります。
またお酒やタバコより毒性が少ないとする意見もありますが、一方でCBDの適量が個々人で異なるため「これなら効く」と勘違いした量が、実は依存や心身の害を及ぼす量という危険性も考えられます。
こうした危険性を十分に理解せず、現在安全だと言われている治療を受けない状態でCBDを不用意に使うことはおすすめできない、と考えます。
質問2:THCを含む医療用大麻合法化には賛成ですか
医療用大麻の合法化については、賛成ですが、あくまで研究のためという前提で行ってほしいと考えています。
人に対し現時点で有効な治療があるにもかかわらず、医療用大麻の方がより効果的であると思い込んで使用することで、どのような事象が起きるか分からないためです。
そのような背景があるからこそ、これまで大麻取締法により治験や研究に制限がかけられてきた分野の研究が進みやすくなるメリットがあると考えます。
現在も大麻の研究は許可制で行われていますが、より研究が進みやすくなれば、安全性の高い使用方法が開発される可能性も高まるからです。
一方、THCについても、より安全に医療用大麻を使うために、研究目的での解禁は必要と考えます。
海外の様々な国で医療用大麻の合法化が進んではいるものの、アメリカでは2019年11月現在FDA(アメリカ食品医薬品局)は大麻そのものは承認していません。
一方で、大麻由来の医薬品と、大麻関連の医薬品は承認しています。
この記事でもご紹介している通り、現時点ではたしかに大麻を合法化している国もあります。
しかし合法化する際には「大麻の効能」や「副作用の少なさ」といった面だけではなく、日本における合法的な使い方と違法ではない使い方の線引きや、医療用大麻だったはずのものを違法に扱う人をどのように取り締まるのか、という多くの問題が出てきます。
許可されることでより研究が進み、どう摂取すればよいのか、どのくらいが適切な量なのか、体質に合わせた利用をするためにどうするべきかが分かれば、合法と違法の線引きがしやすくなります。
「医療用に本当に必要な人がいる」からこそ、また安全に扱える土壌づくりのために、医療用大麻を研究できる環境は必要と考えます。
質問3:THCを含む嗜好用大麻合法化には賛成ですか
THCを含む嗜好用大麻の合法化については反対です。
上記で述べたように、より安全に医療用大麻を使うために、人に対し依存性を発揮するTHCの影響を調査できるようにしていくことには賛成です。
近年、警察による大麻に関する事件の検挙人数は増えています。
もしTHCを含む嗜好用大麻が合法化されれば、検挙の対象となるこうしたアンダーグラウンドでの取引は防げるかもしれません。法律で適切に税が課せられれば、税収アップも見込めるかもしれません。
しかし「法的に安全だから」という理由で、依存症になるほど大麻を使ってしまう人が出てくる可能性は十分あり得ます。
お酒やタバコを禁止するのが現在となっては困難であるように、一度広がってしまえば嗜好用大麻を再び禁止することは難しくなります。大麻に対する世間の眼が批判的なものになり、医療用大麻と嗜好用大麻の境目があいまいになれば、本当に必要な人にとって使いづらいものになる懸念もあります。
日本人の一人ひとりが「大麻の危険性」や「研究の必要性」「医療用大麻と嗜好品の違い」についてもっと深く知らない限り、嗜好用大麻の合法化を進めるべきではないと考えます。