生前の相続放棄はできる?代替案と相続放棄を求められた場合の対処法!

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遺産相続

相続放棄を簡単に説明!

相続放棄とは、被相続人の財産を相続したくない場合に、選択によりその相続の権利を放棄することをいいます。

放棄の対象は被相続人のすべての財産であり、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、債務などのマイナスの財産も含まれます。

つまり相続を放棄した場合、プラスの財産を受取る「権利」と、マイナスの財産を負担する「義務」のいずれも相続人が承継しないということです。

相続を放棄する方法は、裁判所に必要な書類を提出することで認められます。

そして相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになります。

相続放棄の手続きと注意点!

相続放棄の具体的な手順と7つの注意点をご説明します。

相続放棄は誰がどのような手順でおこなうのか

1.手続きができる人

  • 相続人(本人)
  • 相続人から依頼を受けた専門家(弁護士・司法書士)

2.どこへ申述するのか 

  • 被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる
    直接出向いても、郵送でもどちらでも可能

3.必要書類

必ず必要な書類

  • 財産放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附表
  • 申述人(財産放棄したい相続人)の戸籍謄本
    その他、申述人により必要な書類は異なります

申述人が配偶者の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

申述人が子または孫の場合

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 被代襲者(配偶者または子)の死亡の記載のある戸籍謄本

申述人が親または祖父母の場合

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 配偶者または子の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の親の死亡の記載のある戸籍謄本

申述人が兄弟姉妹または甥、姪の場合

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 配偶者または子の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の親の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本

4.   費用

  • 収入印紙代800円(別途、相続放棄申述受理証明書は1通150円)
  • 裁判所に納める郵便切手代500円程度(裁判所により金額は違います)
    以上の申述に必要な書類が揃ったら管轄の家庭裁判所へ提出します。

相続放棄の申述の受理から完了までの流れ

裁判所に相続放棄の申述の受理

    ↓

資料が送付されるまで数日から2週間程度待つ

    ↓

裁判所から「照会書」が送付される

    ↓

「照会書」に回答して署名捺印を返送

    ↓

「相続放棄申述受理通知書」が郵送で届いたら手続き完了

相続放棄した公的な証明書として「相続放棄申述受理証明書」を取得しておくと相続登記などに際に便利です。

申請用紙は家庭裁判所またはホームぺージからもダウンロードできますので、1件につき150円の収入印紙を添えて申請してください。

返信用の切手を同封して郵送でも申請できます。

相続放棄する時の7つの注意点

相続放棄の期限は短い

相続放棄には被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述の書類を揃えて提出し、受理されなければ認められないという期限があります。

生前に相続放棄はできない

相続開始前、即ち被相続人が生きている間は相続放棄できません。

相続人全員が相続放棄した場合

プラスの財産の場合は全て国のものになり、マイナスの財産の場合は債務者と一緒に債務は消滅し、同時に債権者の権利も失われます。

相続財産管理人の選任について

相続人が相続放棄したことにより相続人不在となった場合は、家庭裁判所に申立て「相続財産管理人」を選任する。

選任されるまでは、自己の財産と同一の注意義務を負います。
選任は債権者や特別縁故者などの利害関係人も申立てることができますが、相続人は選任の義務を負うわけではないので、実際は選任されていないという場合もあります。

相続放棄と代襲相続について

相続放棄をすると初めから相続権を有していなかったことになり、その子への代襲相続(*)が発生することはありません。
そうすると、相続放棄をしなかった相続人の相続分が多くなったり、相続人でなかった者が新たに相続人となったりします。

*代襲相続とは

相続開始前に相続人となる者が死亡している場合に、当該相続人となる者の子が代わりに相続すること。

相続人のお金を受取ったり、支払ったりしない

例えば、積立保険で死亡により支払われる解約返戻金は契約者である被相続人に支払われるので、被相続人の相続財産となります。契約者に対してなのか、指定された受取人に対してなのか、保険の支払いの対象者を正確に理解しましょう。

また、たとえ少額でも借金を代わりに返済したり利息だけを支払った場合、この行為も被相続人の財産を処分したとみなされます。

契約者である被相続人に対しての支払いを使ったり、処分してしまうと「法廷単純承認事由」とみなされ、相続放棄や限定承認ができなくなります。

生前の相続放棄ができない理由とは?

現行の法律では被相続人の生前に相続人が相続放棄をすることはできません。

相続放棄は相続開始後に家庭裁判所に対して申述を行うことで成立する行為であるためです。

では「相続」が発生するタイミングはいつなのかということになりますが、被相続人が亡くなって初めて相続は開始されます。

「相続」が存在しない生前に相続人が放棄したいと言っても、家庭裁判所は開始前の相続の放棄は受付けられないということです。

仮に生前に相続放棄の契約書や念書を作成していても、法的効力はありません。

生前に相続放棄をするための代替案7つ!

生前には相続放棄はできませんので、その代替案として生前に次のことをして遺産を与えたくない相続人に財産が渡らないようにしたり、渡したい相続人のために財産を残したりすることができます。

①債務整理

生前に債務整理を行うことで相続人は財産放棄を免れ、その後形成された財産を相続できます。債務整理には三つの方法があります

①-1.自己破産

明らかに生前に借金が返済できない場合、裁判所を通して借金をゼロにしてもらいます。
自己破産後に形成された財産は相続できるので、相続放棄させずに財産を残すことが可能になります。
5~10年は信用情報に記録が残り新たな借金はできなくなります。 

①-2.個人再生

裁判所を通して借金を5分の1に減額できます。

3年程度で借金を返済すれば残りは免除されます。
5~10年は信用情報に記録が残り新たな借金はできなくなります。

①-3.任意整理

裁判所は通さず、貸金業者と交渉して利息や月々の返済額を減らしてもらう手続きです。

任意整理はあくまでも話し合いなので相手が応じてくれなければできません。
5年は信用情報に記録が残り新たな借金はできなくなります。
自己破産や個人再生は、保証人がいる場合に債務整理をすると保証人に一括で請求されてしまうため気を付けましょう。

②遺言書作成と遺留分放棄

財産を渡したくない相続人を相続対象から除外したい場合や、特定の財産を特定の相続人に引き継がせたい場合には、その旨を記載した遺言書を作成します。

そして、財産を渡したくない相続人に遺留分放棄を家庭裁判所に申立ててもらいます。

例えば、推定相続人が長男と次男で、家業を継ぐ長男にすべてを相続させたいのであれば、長男が全財産を相続する旨の遺言書を作成します。

しかし次男が長男に対して遺留分減殺請求権を行使すると遺産の4分の1を渡さなければなりません。

その場合に、遺留分と同等程度の代償を贈与して遺留分放棄を家庭裁判所に申し立ててもらい許可されることで実現します。

遺留分放棄はそれだけでなく、他の相続人と仲が悪く相続財産を受け取りたくないなど相続問題に巻き込まれたくない場合に、遺留分を放棄して相続に関わらないという意思表示ができます。

③推定相続人の廃除

対象者となるのは被相続人の配偶者、子供、親といった遺留分を請求できる相続人になるかもしれない人で、推定の段階では排除することができ、そうすると法定相続人にはなりません。

推定相続人が被相続人に虐待や重大な侮辱を行うなど著しい非行があった場合、家庭裁判所に排除の請求をすることで、その他の相続人に遺産を集中させることができます。

推定相続人の廃除は撤回できます。

直系卑属がいれば代襲相続ができます。

④相続欠格

被相続人や他の相続人を殺害して刑罰を受けたり、被相続人を脅迫したり、遺言書を偽造したりなど、相続を妨害する罪を犯すと、裁判所に何らかの手続きを取る必要もなく相続欠格事由に該当し、相続に関する一切の権利を失います。

相続欠格の撤回はできません。

直系卑属がいれば代襲相続ができます。

⑥生前贈与

プラスの財産がマイナスの財産より多い場合は生前贈与ができます。

相続放棄をすると相続人はすべての財産を引き継ぐことができないため、その前に相続財産を生前贈与しておけば、放棄する財産を最小限にできます。

⑦生命保険に加入

被相続人が契約している死亡保険金の受取人が特定の相続人の場合、原則として受取人の固有の財産と評価され相続財産に含まれないと考えられます。

受取人である特定の相続人が財産放棄しても、自身の権利として生命保険金は受け取れます。

例えば、父が子を受取人として契約した生命保険の支払いがある場合、子が父の相続を放棄しても死亡保険金は受取れます。

相続放棄させたい相手がいる場合

先に述べたように、生前に相続放棄することはできません。

たとえ被相続人の生前に相続放棄する旨の念書や誓約書を作成しても無効です。

相続開始後に作成されたとしても、あくまでも相続分の放棄ということになります。

この場合、被相続人の生前にできる対策として前述した方法があります。

また、相続放棄してほしい相続人がいる場合、相応の代償を与えるなど一定の配慮も必要です。

相続放棄を求められた場合の対処法

一度相続放棄をしてしまうと原則撤回はできません。

求められたからといって安易に相続放棄をして後悔しないようによく考えて慎重に行動しましょう。

当たり前ですが、相続放棄すべきかを迷っている間はいくら強引に相続放棄を求められても、応じる必要はありません。

まずは相続財産を調査した上で、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかにより、相続放棄した方が良いのかどうかということや、相続分を主張すべきかどうかということを検討していくことになります。

その結果、相続したい場合は相続人と「遺産分割協議」を行うことになります。

相続人と相続財産を調査して確定したら他の相続人との協議で相続分の主張を行います。

しかし、相続放棄を求められた相続人との話合いは難航が予想されます。

 

3ヶ月という短い期間で調査や手続きをしなければいけないので、一人で考えず、わからない場合は専門家に相談するなど慎重に行動しましょう

遺留分放棄について詳しく解説!

遺留分とは亡くなった人の配偶者や子供、両親に用意されている遺産を最低限度受け取ることができる権利です。

先述したとおり、遺留分放棄は相続人が財産を放棄したいという場合に生前に行える対応方法の1つです。

遺留分の放棄は、相続人に認められた大切な権利であるため、こちらで詳しく解説します。

遺留分放棄は、相続放棄とは異なります。相続放棄は、法定相続人が相続人としての地位を放棄することです。そのため、相続放棄をした場合は資産も負債も一切相続できなくなります。

一方、遺留分放棄は遺留分のみを放棄することです。相続権は失いません。

以下では、遺留分放棄を行う際の手続き方法を解説します。

被相続人の生きている間に行う場合

被相続人が生きている間に遺留分放棄を行う場合は被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で「遺留分放棄の許可」を得る必要があります。

許可の申立ては、遺留分の権利者本人が行います。申立ての際は、以下の書類が必要となります。

  • 家事裁判申立書
  • 不動産の目録
  • 現金、預貯金、株式などの財産目録
  • 被相続人予定者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)

申立てにかかる費用は、収入印紙800円と連絡用の郵便切手代です。

家庭裁判所に「遺留分放棄の許可」を得るには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 遺留分権利者が自らの意思で放棄する必要があり、他者が強要してはならない。

どんなケースでも遺言書の放棄が認められるわけではないので、注意が必要です。

被相続人の死後にに遺留分放棄を行う場合

被相続人の死後に遺留分放棄を行う場合は、遺留分権利者が「遺留分を請求しません」と意思表示するだけで良いのです。

遺留分侵害額請求は、「相続開始と遺留分を侵害する遺言・贈与を知ってから1年以内」に行う必要があります。

遺留分を放棄すると、基本的には撤回することは出来ませんので、熟考してから遺留分放棄を行いましょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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