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家族信託が必要な場合・必要ない場合、メリットとデメリットをまとめて解説!

そもそも家族信託ってなに?

家族信託とは、財産をお持ちの委託者が、信託する財産で叶えたい想いや願い(信託目的)を叶えるために、その財産を家族(受託者)に信じて託します。

そして、その財産における利益などを受け取って欲しい人(受益者)のために使用するというものです。

注意すべきポイントとして、信託の登場人物は、財産を持っている人(委託者)、信じて託せる家族(受託者)、信託する財産から利益などを受け取る人(受益者)が最低限必要になります。信じて託せる家族がいない場合には、家族信託を行うことができません。

このような場合には、商事信託として信じて託せる信託会社を受託者とする必要がありますが、信託財産の管理等に伴う手数料などが発生することがあります。また、信託においては受託者が最も重要な存在になります。

万が一、受託者が先に亡くなった場合に備え、予備受託者(当初受託者が亡くなった場合等に備えた次の受託者)の指定をしておくことが望ましいです。

家族信託が必要な場合

家族信託が、特に効果があると考えるのは、不動産と自社株式の信託です。

<例:不動産を信託する場合>

夫婦で夫名義の自宅に住んでいる夫婦がいました。

この夫婦には、長男がいましたが結婚して別で暮らしています。

最近、高齢になってきたこともあり、夫婦2人での生活が不安になってきました。

そこで、自宅を売却して老人ホームへの転居を考えることにしたのです。

しかし、夫婦の思い出がある自宅には、なるべく長く住んでいたいとも思っています。

長男のことは頼りにしているため、何かあった場合には自宅の売却をお願いしたいと考えていました。

家族関係は、父・母・長男の3人です。

委託者(特定の者):父

受託者(信じて託せる家族):長男

受益者(信託財産から利益等を得る者):父

信託財産:自宅不動産+管理のための金銭

信託目的:受益者の生涯にわたる安定した生活・介護・療養費を確保するため、信託財産について、適切な管理、運用、処分を通じて、資産の有効活用を図ることを目的とする。

このように父と長男で信託契約を締結し、不動産の信託登記を行うことで自宅の所有者は、受託者である長男名義になります。つまり、長男へ贈与したことと同じ効果です。

これにより、売却について長男が単独で行うことが可能になります。

ただし、売却した後の金銭に関しては父のために使用します。

また、信託は父が亡くなった時に備え「次の信託財産から利益などを受け取る人(二次受益者)」を指定しておくことができます。

二次受益者として母を指定した場合、父が亡くなったとしても自宅または自宅売却後の金銭を母のために使用することができるのです。

このように信託は、親が認知症になってしまった際や相続に関するトラブルの対策を行うことができる仕組みになっています。

<例:自社株式を信託する場合>

自社株式をお持ちの経営者が次世代に事業を引き継いでいくときのハードルとして、株式を渡していくことが挙げられます。

業績の良い会社ほど、株価が高くなり引き継ぐ後継者が、株式を引き受ける際に必要な資金を用意するのが大変になります。また、贈与で引き継ぐと「贈与税」、相続で引き継ぐと「相続税」が課税されるため、どのように引き継いでもお金の問題が残ります。

ただし、信託にしたからと言ってお金の問題が解消されるわけではありません。

しかし、後継者として経営を任せてよいかどうかを早めに判断することはできます。

株式を持っている経営者を委託者、後継者を受託者として経営権を持たせてみるということができるのです。

委託者:(株式を持っている)経営者

受託者:(株式を託され会社経営する)後継者

受益者:(受託者が経営して出た配当を受ける)経営者

上記のように受託者は会社の経営権を得て、株主名簿に株主として記載されます。

この委託者と受益者を同一にすることで、株式の名義が後継者に変わったとしても課税されることはありません。

信託は経営者と後継者が契約を交わすものです。信託契約なので、内容は、法律に反しない限り自由に決めて構いません。経営者が後継者のことを経営に向いていないと判断すれば、信託している株式を元の経営者に戻すことができる記載を信託契約書に入れておくことも可能です。そうすれば株式を後継者から経営者に戻すことができるのです。

つまり、後継者にとって会社経営の「お試し期間」ができるということです。信託の場合、株式を経営者に戻しても贈与税は課税されません。

前にも述べましたが、信託でお金の問題(贈与税・相続税等)が解消されたわけではないので経営者の相続発生時には、一定の財産以上持っていると相続税が課税されることになります。納税資金の対策は必要です。

信託は、認知症や相続時に「想い」や「願い」を叶えることができる仕組みです。

不動産や自社株式などのように、想いや願いのある財産について強い効果を発揮します。

家族信託が必要ではない場合

「想い」や「願い」のある財産について強い効果を発揮する信託ですが、効果的でない場合もあります。

家族信託とは、財産をお持ちの委託者が、信託する財産で叶えたい願いや想い(信託目的)を叶えるために、その財産を家族(受託者)に信じて託します。

そして、その財産における利益などを受け取って欲しい人(受益者)のために使用するというものです。

つまり『信託目的に従って、信託する財産で叶えたい願いや想い(信託目的)を叶えるために、その財産を家族(受託者)に信じて託すもの』ですので、信託目的と信託財産以外のことについては効果を発揮することがありません。

<例:おひとりさまの終活の場合>

おひとりさまの今後の備えとして、財産の管理や施設への入所などについて、信頼できる第三者にお願いしたいと考えているとします。

このような場合、信託を活用することで財産の管理・運用・処分等をすることが可能になります。しかし、施設へ入所するためには契約(施設入所契約等)が必要になるのです。

信託は信託財産の管理・運用・処分等について定めることはできますが、施設入所等の法律行為については定めることができません。家族であれば、施設入所なども心配はないかもしれません。

しかし、第三者の場合には違います。施設との契約について対応することについても、権限があるかが問題となる可能性があります。

信託のみではおひとりさまのサポートは難しいということです。このような場合には、信託だけでなく、成年後見制度や財産管理委任契約・任意後見契約を併用して活用する場合も多く存在します。

家族信託のメリットとデメリットは?

前述のような自宅の売却における認知症対策について、信託が活用される以前には生前贈与が利用されていました。

父から長男へ、生前に贈与しておくことで長男が自宅を売却することができるからです。しかし、贈与税や売却時の不動産取得税などの負担が大きくなります。メリットとしては、これを信託にすることで、不動産名義が長男名義になっても贈与税や不動産取得税の課税がされないことです。

また、信託設定時には、贈与と比べて登録免許税が約5分の1で済むのです。

さらに実家不動産売却時には、要件を満たせばマイホームの特別控除が適用できます。

加えて信託財産である自宅について、適宜な時期に不動産の売却を行うことができるので父や母の生活の困窮を防ぎ、生活費を守ることもできるため資産の有効活用を図ることが可能です。

このように信託は「想い」や「願い」を叶えることができる信託ですが、実務上のデメリットもあります。それは「抵当権付の不動産」または「今後、借入が必要な不動産」についてです。

「抵当権付き不動産」とは、金融機関からお金を借りる際に不動産に設定する抵当権という権利がついている不動産のことをいいます。

抵当権とは、お金を貸す側からみて貸しているお金が返済できなくなったときに、ほかの債権者(お金を貸している人)に優先してその不動産から弁済を受けることができる権利のことです。

抵当権の順位という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

1位から2位、3位というように同じ不動産に複数設定することができて、1位から優先して弁済を受けることができるのです。

抵当権の設定がされた不動産については、信託による所有権移転の際、債権者の同意を得る必要があります。つまり、同意が得られない場合には信託による所有権移転を断念することとなります。

※債権者の同意がなくても所有権移転は可能ですが、一括返済を求められるなど問題となることがあります。

また、信託後に借入をする場合にも注意が必要です。通常の不動産に比べ、借入に関する審査などが厳しくなる傾向にあるからです。

そのため信託をする前に抵当権の有無や今後の活用について検討しておく必要があります。

以上のように、信託は認知症や相続の対策のために有効に活用することで効果を発揮します。しかし、数名の登場人物や最終的に信託が終わった時のことなど多くを決めておくことが必要になります。

信託は遺言や後見では不可能であったことを可能にする仕組みですが、万能ではありません。総合的な判断を行い、本当に必要な対策を行うことが笑顔相続において一番重要なことになります。

まずは相続の専門家に相談をし、何が本当に必要な対策かを検討することから始めてみてはいかがでしょうか。

家族信託にはどんな専門家が必要になる?

認知症対策や自社株対策として信託をお考えでしたら、窓口として相続診断士にご相談ください。

相続診断士、相続・事業承継を専門としている士業、行政書士、司法書士、税理士等がチームとなって信託契約をサポートします。

行政書士は、お客様の想いや願いを聞き信託契約書を作成します。

司法書士は、信託契約書に基づき不動産の信託登記を行います。

税理士は、信託契約期間に発生した課税関係の税務相談、必要であれば信託計算書の作成や税務署への申告を行います。

行政書士、司法書士、税理士といっても業務の範囲は多岐にわたります。

全ての人が信託に精通しているとは限りません。

各専門家へ実務経験等を聞いてみるのも判断のひとつになるでしょう。

まずはご自身の対策に信託が必要かどうかも含め、相続診断士へ相談してみてはいかがでしょうか。

相続診断士は、みなさまが後世に「想い」や「願い」を引き継いでいくお手伝いをいたします。

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