マンションの長期修繕計画書のガイドラインや標準様式を確認しよう!

長期修繕計画のガイドラインと標準様式

長期修繕計画とは、マンションの維持管理を、長期にわたって計画的に進めるために定めるものです。

マンションを維持管理するために行われる、最も大きな工事といえば、約10~13年に1度必要とされる「大規模修繕工事」です。

長期修繕計画は主に、この大規模修繕工事を、スムーズかつ修繕積立金の範囲内で行うために必要となります。

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マンションごとに長期修繕計画が必要

長期修繕計画は、マンションそれぞれの実態に即して作成する必要があります。

マンションの長期修繕計画書とは?

しかし、個々の管理組合や管理会社が、自由に長期修繕計画を作成していては、修繕積立金の額に開きが出たり、区分所有者の意見が工事に反映されなかったりと、マンション間で公平性を欠いてしまう恐れがあります。

そのような事態を避けるために、国土交通省では、長期修繕計画を作成するための、「ガイドライン」と「標準様式」を策定しています。

長期修繕計画作成ガイドラインとは

長期修繕計画の作成ガイドラインでは、大規模修繕工事に関わる以下の項目について、どのように設定すべきかが解説されています。

長期修繕計画の計画期間

計画期間とは、その長期修繕計画が、何年分の大規模修繕工事を見据えているかを示したものです。

ガイドラインによれば、新築マンションの場合は30年、既存マンションの場合は25年以上を計画期間とすることが推奨されています。

修繕周期の設定

修繕周期とは、マンションの仕様や立地、劣化状況に応じて、工事箇所ごとに修繕すべきタイミングを定めたものです。

マンションの共有部分の設備で劣化するものは?

ガイドラインではさらに、できるだけ複数個所まとめて工事を行うことが推奨されています。

大規模修繕の時期や周期は?

推定修繕工事項目の設定

推定修繕工事項目とは、外壁や屋上、鉄部や共用部など、修繕工事を行う箇所のことです。

設計図や、既存の長期修繕計画、過去の修繕履歴などに基づいて決めることが望ましいとされています。

大規模修繕の工事内容は?

工事の単価設定

推定修繕工事項目ごとの、工事単価の設定方法が解説されています。

特に、過去に修繕工事が行われたマンションでは、過去の工事費用や工事会社からの見積もりなども資料に使用することが推奨されています。

大規模修繕工事の費用は?

推定修繕工事費用の算定

先にピックアップした、推定修繕工事項目に対し、それぞれの工事単価を乗じて、推定の修繕工事費用を算定する方法が解説されています。

また、消費税や借入の金利などは、作成時点の数値で問題ありません。さらに、修繕積立金の金額についても、現時点の想定額で良いとされています。

修繕積立金の設定

ガイドラインでは、修繕積立金の設定方法を「均等積立方式」としています。

均等積立方式とは、計画期間に応じて修繕積立金を均等に割り振る算出方法のことです。

計画時点と工事発生時点では、修繕積立金の使用割合や積立額、さらに工事項目なども変動するため、長期修繕計画の見直しに応じて、変更が発生することも視野に入れておく必要があります。

参考:国土交通省『長期修繕計画作成ガイドライン』

長期修繕計画作成標準様式とは

ガイドラインの中では、大規模修繕工事の工事項目や修繕スケジュールの設定方法が記載されていますが、白紙の状態から綿密な長期修繕計画を作成する作業は、建築の専門知識が少ない管理組合にとって、容易ではありません。

そのような状態でも、ガイドラインの指示内容を漏れなく計画に反映できるよう、「長期修繕計画の標準様式」という、修繕計画書の雛形が用意されています。

マンションの基本情報記載欄

標準様式には、敷地面積や延床面積、住戸数、竣工日、給排水や空調、電気など設備ごとの種類、建設に当たった施工会社や管理会社といった、マンションの基本情報を記載する欄が用意されています。

また、構造計算書や修繕工事の設計図といった、各種設計図書の保管状況をチェックする欄もありますので、手元に揃っていない状態でも、標準様式を参考に集めていくことが可能です。

マンションの工事箇所一覧

管理組合にとって、最も判断が難しいのが、工事箇所のピックアップと言っても過言ではありません。

標準様式には、屋上やバルコニー、廊下や手すり、各設備など、通常の大規模修繕工事で補修が発生する箇所も一覧でまとめられており、劣化状態と補修方法も併せて記入することができます。

そのため、建築の知識がない管理組合でも、設計図書と見比べながら、工事項目を漏れなくチェックすることができるでしょう。

修繕計画の総括表

標準様式には、各工事箇所の修繕計画と、工事にかかる支出、修繕積立金などの収入をひとまとめにできる総括表が付いています。

新築マンションを想定した、約30年分の表になっていますので、修繕スケジュールと収支バランスを、一枚の表で確認することが可能です。

さらに、約30年分の収支グラフも用意されていますので、大規模修繕工事で一気に修繕積立金が減るタイミングと、修繕積立金の推定累計学を、グラフにして可視化することができます。

推定修繕工事費内訳書で支出を整理

標準様式には、細かい工事箇所ごとの、工事単価と数量をひとまとめにできる「推定修繕工事費内訳書」という雛形が用意されています。

この雛形に沿って、工事単価と数量を当てはめていくことで、おおよその修繕金額を算出することが可能です。

しかし、管理組合が作成した時点では、正確な劣化状況や修繕周期などは金額に反映されていません。

そのため、劣化診断の結果や、マンション管理士などのコンサルタントにチェックしてもらい、より具体的な計画に近づける作業も必要です。

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修繕積立金の設定欄

修繕積立金の金額は、分譲マンションの購入者や区分所有者に、設定に至った理由を納得してもらわなければなりません。

その際に役立つのが、標準様式の中の「修繕積立金の額の設定」という様式です。

修繕計画に対し、予想される工事費用やマンションの住戸数などを根拠に、理想的な修繕積立金を求められる表になっていますので、区分所有者や理事会からの理解も得やすくなるでしょう。

参考:国土交通省『長期修繕計画標準様式』

長期修繕計画の見直しにコンサルタントを活用する

ガイドラインと標準様式を使えば、必要な項目が網羅された長期修繕計画を作ることは可能です。

しかし、マンションは、立地や使い方、管理方法、修繕積立金の使用状況など、建物ごとに実情が異なるため、様式通りに記入されただけの長期修繕計画では、実際の運用に役立たない恐れがあります。

そのため、長期修繕計画の作成や見直しは、建物ごとの劣化状況や、過去の修繕履歴などをもとに、そのマンションの実情に即した長期修繕計画を作成できる、コンサルタントやマンション管理士など、外部の専門家の協力が必要です。

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長期修繕計画のガイドラインにおいても、「管理組合は、計画の見直しを専門家に委託してよい」とされており、その際、標準様式を使って、管理組合や区分所有者が持つ修繕のビジョンを伝えることが推奨されています。

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マンション標準管理規約の改定

マンションの維持管理を定めるガイドラインには、国土交通省が策定した『マンション標準管理規約』というものがあります。

このガイドラインは平成28年に改定され、その中で「外部専門家の活用」が新たに銘記されました。

これまでの規約では、分譲マンションにおいて、理事長を含む管理組合は、区分所有者しか就任できませんでした。この点が、改定によって、マンション管理士などの外部の専門家も、新たに就任できるようになっています。

その際、外部の専門家が、工事会社や管理会社などと癒着し、公平性に欠ける業務を行わないよう、「外部専門家の活用ガイドライン」も新たに発表されました。

ガイドライン内では、外部の専門家を導入するまでのプロセス、総会での決議事項、万が一トラブルが起きた時の対応などが網羅されています。

参考:国土交通省『外部専門家の活用ガイドライン』

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外部コンサルタントの利用が推奨される背景

このように、外部の専門家を積極的に活用することが推奨されるようになった背景には、マンション管理の複雑さが大きな理由となっています。

修繕積立金が適正利用されていない分譲マンションや、区分所有者からの修繕積立金徴収が滞っているような、いわゆる「管理不全マンション」に対しては、マンション管理士やコンサルタントの活用が鍵となります。

また、今後大規模修繕工事のラッシュが続くとされる、数百戸が集まるタワーマンションでは、区分所有者で構成された管理組合だけでは、適正な修繕計画を立てるのは非常に困難です。

このような理由によって、国の資産であるマンションの大規模修繕工事がおろそかにならないよう、専門家が管理組合のメンバーとして、適切なアドバイスを行うことが推奨されるようになりました。

参考:国土交通省『マンション標準管理規約』