アパートの大規模修繕費用の相場は?

アパートの大規模修繕費用の相場

大規模修繕工事が必要なのは、マンションだけではありません。
戸数が少なく、建物面積が比較的小さいアパートでも、定期的な修繕が必要です。

アパートの屋上や外壁、各世帯のバルコニーやエアコン、共用部の廊下などを修繕することで、築年数が古いアパートも、物件としての価値を高めることができます。

アパートの修繕を徹底解説!費用負担は入居者?オーナー?

アパートの修繕箇所と費用相場

アパートの大規模修繕工事のうち、メインとなるのは、外壁の塗装や補修、屋上の防水工事です。

内装のクロスやフローリングは、退去時の原状回復工事で状態が保たれていることが多いため、大規模修繕工事では、改めて実施されない傾向にあります。

また、バルコニー工事や給湯器の交換なども、設備の耐用年数が約10~20年経過している場合は、大規模修繕工事と併せて行われます。

足場設置費用の相場

  • 約800~1200円/平方メートルあたり

工事の前に、アパートの周りに足場を組みます。アパートであれば、ゴンドラなど本格的な足場を用意せずとも、戸建て住宅の外壁塗装で使われる枠組足場で事足ります。

外壁塗装費用の相場

  • 約3000~7000円/平方メートルあたり

外壁塗装費用には、塗料を塗る作業だけでなく、下地となる外壁材の浮きやひび割れなどの補修も含まれます。

補修箇所が少なく、ウレタン、またはシリコン塗料などの標準的な塗料で塗装するだけで済む場合は、平方メートルあたり約3000円ですが、補修箇所が多い場合は、平方メートルあたり約1万円近い費用になることもあります。

屋上・屋根・バルコニー防水工事の費用相場

※すべて平方メートルあたりの金額です

  • ウレタン防水工法:約4000~6000円
  • シート防水工法:約3000~6500円
  • FRP防水工法:約6000~9000円

屋上では、ゴムや塩化ビニールシートによる防水工事が行われることが多く、ベランダやバルコニーなどの狭い場所では、FRP防水工法による施工が一般的です。

また、上記以外にも、アスファルト防水という施工方法もありますが、コンクリート押さえ仕上げによって重い防水層が出来上がるため、木造アパートの屋上ではあまり行われていません。

鉄部のサビ落とし費用相場

  • 約1000~3000円

廊下や階段などの共有部にある、鉄製部材のサビを落とします。

サビが鉄部の深部まで浸食していたり、膨れや穴が空いたりしていると、「ケレン作業」と呼ばれるサビを落とす作業が高額になってしまいます。

手作業で落とせるサビであれば、平方メートルあたり約1000円程度で済みますが、サビが広がって、電動工具や薬品を使用するようなケースでは、平方メートルあたり約3000円になることもあります。

給水ポンプ交換費用の相場

  • 約80~200万円

給水ポンプとは、3階建て以上のアパートやマンションで、水道の水を加圧で各部屋に給水するための設備です。

なお、2階建て以下のアパートでは、給水ポンプを使わずに水道の水が各部屋に届きますので、ほとんど設置されていません。

給水ポンプを交換するタイミングは、約20年に1度と言われています。給水ポンプが故障すると、その瞬間に、入居者全員が水を使えなくなってしまいますので、大規模修繕工事の際に、交換が必要かよく確認しておきましょう。

給湯器の交換費用相場

  • 約10~15万円/1台あたり

各部屋で使用する給湯器は、オーナーまたは管理会社が修繕費用を負担しなければなりません。

こちらも約10~20年に1度は交換が必要となる設備ですので、大規模修繕工事の際に、点検を済ませておきましょう。

エアコン交換費用の相場

  • 約5~10万円/1台あたり

エアコンは、交換サイクルが約10年以内と、マンションの設備の中でも耐用年数が短いため、大規模修繕工事の際にまとめて交換すると良いでしょう。

アパート一棟分の合計修繕費用

上記の項目ごとの費用を使って、一棟のアパートで大規模修繕工事を行った時の、合計費用を計算してみましょう。

例1)築15年の木造アパート

  • 外壁面積:約500平方メートル
  • 屋上面積:約100平方メートル
  • 総バルコニー面積:80平方メートル
  • 戸数:12戸

上記のアパートで、大規模修繕工事を行ったと仮定します。

  • 足場設置費用:約25~60万円
  • 外壁塗装費用:約75~300万円
  • 屋上ウレタン防水工事費用:約40~60万円
  • バルコニーFRP防水工事費用:約48~72万円
  • 鉄部のサビ落とし費用:約20~40万円
  • 給湯器交換費用:約100~150万円
  • エアコン交換費用:50~100万円

合計:約350~800万円

例2)築25年の木造アパート

面積・戸数は「例1」と同様と仮定します。

築30年が目前になると、バルコニーのひび割れや鉄部の錆びが目立ち始め、給湯器の不具合も増えはじめます。
そのため、

  • 給水ポンプ交換費用:約80~200万円

が追加になり、合計430~1000万円ほどになるでしょう。

アパートを大規模修繕するメリット

戸建て住宅や賃貸物件、居住用物件や公共施設など、どのような建物も、年数の経過とともに劣化していきます。

入居率の維持と向上のためにも、大規模修繕工事で、不便な箇所や劣化箇所を補修しておきましょう。

計画的な修繕で物件の価値を保つ

修繕工事は、劣化の補修だけでなく、劣化の進行を防ぐ目的でも行われます。

建物の中でも特に、計画的に修繕を必要とする箇所が、外壁や屋根、または屋上です。

建物を守る外装が劣化してしまうと、雨や紫外線、強風など、外からの刺激に非常に弱い建物になってしまうため、劣化が小さいうちに、早めに補修しておかなければなりません。

何よりも、外壁や屋根を、塗装や補修で美しくリフォームすることは、入居者だけでなく、外を通る人や、物件の入居希望者に良い印象を与える手段となります。

入居者への安心感を与える

大規模修繕工事を行うと、騒音の発生や、窓の開閉が行えない、足場で建物が囲まれてしまう、洗濯物が自由に干せないなど、入居者にも多くの負担を強いることになります。

そのため、「大規模修繕工事をすると伝えたら、入居者に嫌な思いをさせるのでは」とお悩みのオーナー様も多いのではないでしょうか。

しかし、大規模修繕工事によって、より快適な暮らしが手に入るという、入居者側のメリットをしっかり説明することができれば、入居者を味方につけることも不可能ではありません。

また、アパートの修繕工事は、費用をすべて、オーナーまたは管理会社が負担して行います。

そのため、マンションのように、管理組合で議決を取って修繕費用の使用許可を得たり、住民説明会を開いて費用の負担をお願いしたりする必要がなく、管理会社の力を借りずに、オーナー主導で進めることが可能です。